使命に励むミッション・ワーカーにとって、燃え尽き症候群は非常に身近な問題です。自分自身がその危険と隣り合わせだと感じていたり、仕事仲間がそうなってしまっていたり。人生を棒に振ってしまうような結果を目にすると、他人事で済ませることはできません。
この記事では、燃え尽き症候群の兆候にいち早く気が付き、最初の対策ができるようにセルフチェックシートを提供します。
燃え尽き症候群とは何か
あれほど一生懸命取り組んでいたのに、急にやる気が出なくなってしまった。
毎日が充実していて、目まぐるしく状況が動いていたのに、まるで世界の時間が止まったように感じる。
すべてを投げ出してもいいと思うほどやりがいのあったことが、いまや何の意味もなく感じられてしまった。
本人にとっても、周りの人にとっても、不思議なほどの変化です。いったいどうしたというのでしょう?
この急激な変化こそが、燃え尽き症候群と言われるものの特徴的なパターンです。
燃え尽き症候群は病気ではない
世界保健機関(WHO)の定義によると、燃え尽き症候群は、正式な病気とはされていません。すぐに医者にかかり、治療を施すべきものというよりは、うつ病や自律神経失調症など、さまざまな疾病を生み出しかねない、好ましくない状態として理解することができます。
ですから、一口に燃え尽き症候群と言っても、非常に軽度な兆候が見られるという状態もあれば、深刻な健康障害をもたらしてしまっているという状態もあります。
この記事では、ごく軽度な燃え尽き症候群、いわゆる燃え尽き寸前の状態について、専門的な医師にかからなくても自分でできる対策をまとめます。
燃え尽き症候群には2種類ある
燃え尽き症候群は2種類に分けられます。
1つめのタイプは、成果を出すために頑張りすぎてしまい、燃え尽きてしまって無気力になってしまうパターンです。
高い目標を掲げた。いつも以上に努力を積み重ねた。時間も労力も費やした。無理もした。結果として、耐えられない負担になってしまった。これ以上、取り組むことができなくなった。
このタイプを、挫折型と呼ぶことにしましょう。
もう1つのタイプは、努力の結果、目標を達成してしまい、取り組みの意味を見失ってしまったパターンです。
目標に向かって頑張った。努力をした。熱心に取り組んだ。成果が得られた。望む結果を手にした。結果として、次の目標を見出だせない。取り組みに対する意欲が失われてしまった。
このタイプを達成型と呼ぶことにしましょう。
燃え尽き症候群の主な原因は使命と成果のミスマッチ
2つのパターンに共通するのは、使命と成果のミスマッチです。
挫折型は、使命が大きく成果を出すことができないパターンと理解することができます。大きすぎる使命に対して、懸命の努力を重ねたものの、出てきた成果が小さく、見合わない。その状態が続くことによって、努力し続けることの限界を迎えてしまった、ということです。
一方、達成型は使命に対して大きく成果を出したパターンと理解することができます。使命に対して、懸命の努力を重ねたことにより、大きな成果が出た。結果として、これ以上の取り組みを続ける意義を見出すことができない、ということです。
燃え尽き症候群の予防、あるいは初期の対策としては、使命と成果のミスマッチを取り扱っていくことが有効です。
あなたは燃え尽き寸前ですか?
燃え尽き症候群は、早く自覚し、対策を取ることがなにより重要です。あとになればなるほど、深刻なものになってしまいます。
この記事の最後にある記入フォームから、無料で「燃え尽き症候群セルフチェックシート」を申し込むことができます。正式な医学的症状のチェックシートではありません。あくまでも目安としての自己診断シートです。ご自分の振り返りのために、活用してください。
セルフチェックのポイント
自分が燃え尽き寸前化どうか判断するために、特に意識してほしいことがあります。それは、以前の状態との変化です。同じ事柄について、以前はどうしていたか、今はどうしているか。変化があれば、そのことに特に注目しましょう。
燃え尽き症候群では、多くの場合、具体的な理由がないにもかかわらず、急激な変化が見られます。例えば、いままで楽しいと思っていた仕事が、同じ仕事であるにもかかわらず、急につまらないものに思える、といったようにです。そのような変化に気がついたときには、自分が燃え尽きる予兆として理解すると良いでしょう。
ダウンロードできるセルフチェックシートでは、5つの観点から、自分自身の歩みについて点検します。具体的には、身体面、気力面、人間関係面、仕事面、生活面です。ひとつずつ簡単に説明します。
身体面
健康状態、身体状態に急激な変化はありませんか。体調を崩していませんか。睡眠、食欲などについても不調が生じていないか、チェックします。
気力面
精神面、充実感などに急激な変化はありませんか。無気力になっていませんか。意欲、感情の起伏などについても不調が生じていないか、チェックします。
人間関係面
身近な人、仕事仲間との関係に急激な変化はありませんか。孤立していませんか。協力体制や対人感情などについても不調が生じていないか、チェックします。
仕事面
仕事の結果に急激な変化はありませんか。パフォーマンスが低下していませんか。時間管理や作業能率などについても不調が生じていないか、チェックします。
生活面
習慣や日常生活に急激な変化はありませんか。生活のリズムが崩れていませんか。逃避行動や無意識の問題行動がないかなどをチェックします。
すぐにとるべき対策
「燃え尽き症候群セルフチェックシート」によって、自分自身の状態を冷静に観察することができるでしょう。急激な変化が見られ、好ましくない状態にあることがわかったら、すみやかに対策をすることが必要です。
深刻な状況であれば、医師のもとを訪ねて診察を受けることをお勧めします。その際、自分の燃え尽き傾向がどこの部分に強く現れているのか、的確に伝えることが診察の助けになります。
一方、さほど深刻な状態でない場合もあるでしょう。それでも油断は禁物です。以下に、5つの観点について、自分の範囲で取り組むことのできる対策を記します。これを参考に、自分を良い状態に回復させていきましょう。
身体面
身体面での急激な変化、不調を感じ取ったら、まずは生活リズムを整えましょう。ゆっくりと休む時間を確保します。規則正しい食生活、睡眠を心がけましょう。
これまで無理を重ねてきています。回復のためにもゆっくりすぎるくらいのペースがちょうどいいかもしれません。
気力面
気力面での急激な変化、不調に気がついたら、まずは自分の状態をそのまま受け止めましょう。これではいけない、と自分を責めるのは逆効果です。気力の変動は結果です。多くの場合、その原因となることがあります。自分の感情を冷静に受け止めましょう。
そのために、自分の感情について、親しい人に正直に話し、受け止めてもらうことは、大きな助けになるでしょう。
人間関係面
人間関係面で急激な変化、不調に気がついたら、まずは身近な人との関係に注意を払い、孤立しないようにしましょう。
不特定多数の人との関わりは、負担になるので避けたほうがよいでしょう。人数は少なくてよいので、自分のことをよく理解し、気を使わずにすむ相手を選び、時間を過ごすようにしましょう。仕事の打ち合わせや相談ではなく、いっしょに時間を過ごすことを楽しみましょう。
仕事面
仕事面での急激な変化、不調に気がついたら、まずは自分のスケジュールを見直してみましょう。大きなことではなく、確実にできる小さなことを見つけて、それから取り組むことにします。
挫折型で、過度な負担になっている件がある人は、他の人に協力を依頼しましょう。達成型で、することがないと感じる人は、他の人の手伝いなど、興味あることに関わってみましょう。
生活面
生活面での急激な変化、不調に気がついたら、意識してリフレッシュの時間をとるようにしましょう。仕事とは関係のないことを、生産性などを考えずに楽しみます。
罪悪感を感じずに済む、できるだけ離れた環境に身をおくことがおすすめです。
本質的な対応
燃え尽き寸前の自分を発見したら、まずは当面の対応策として、その状態から抜け出る手がかりを探っていきます。
と同時に、燃え尽き症候群の原因となる、使命感と成果のミスマッチについても、取り組んでいくことが必要です。一つの方向性は使命をあらためて確認すること、もう一つの方向性は成果に向けた取り組みの改善を図ることです。
使命の確認
挫折型には、大きすぎる使命という課題があります。達成型には、小さすぎる使命という課題があります。自分の置かれている状況に対して、ふさわしい使命を確認することが重要です。
挫折型は、しばしば使命を大きな目標と直結させてしまっています。そのために、無理な努力が積み重なり、挫折感をもつことになります。
ですから、使命を確認しながら、それをより小さな目標に落とし込みましょう。具体的で、実現可能な目標を設定し、それを小気味よく果たしていくことに集中しましょう。
一方で、達成型は具体的な目標を大きな使命と同一視してしまっています。そのために、目標を達成した時点で、さらなる使命に向かう取り組みはない、と考えてしまうのです。
ですから、達成型の場合は、大きな使命を確認しながら、新しい取り組みがいのある目標を設定しましょう。同じ使命を、別の形でより良く果たすことを目指しましょう。
成果の向上
さらに、違った側面からの取り組みは、取り組みをさらによいものにし、使命の実現に近づいていくことです。
挫折型は、懸命に取り組んでいながら、成果を出せないことが課題です。努力量が足りないわけではないでしょう。となれば、取り組みをより絞って、リソースを集中させていくことが必要になります。
自分の能力や特質をよく理解し、何に取り組むべきなのか、反対に何に取り組まないべきなのか、明確にしましょう。おおまかにではなく、ピンポイントで具体的な少数のことに絞ることが大切です。自分がやらないことは、きちんと説明しながら、他の人に委ねましょう。このようにして、自分の取り組みの効果を最大にすることができます。
一方、達成型は目標に対して、取り組みに余裕があることが課題です。気楽に続ければよい、では、なんの問題の解決にもなりません。取り組みの成果だけでなく、取り組む自分自身の成長に焦点を当てて、意識していくことが良いでしょう。
周囲からの率直なフィードバックを集めます。それをもとに、一回り、二回り成長した自分の姿を思い描きましょう。そのイメージに合わせて、取り組みを展開していきます。定期的なフィードバックによって、成長の手応えを感じることができます。
燃え尽き症候群の予防のために
ミッションワーカーたちが、燃え尽きてしまい、人生を棒に振ってしまうようなことを聞くことがあります。非常に胸が痛みます。せっかく尊い使命に立ち上がってくれたのに、と思います。同志だと思っているので、悔しい気持ちで一杯になります。燃え尽き症候群などというものは、この世から無くしたい、と願っています。
では、予防のためにどうしたら良いのでしょうか。
- 定期的なセルフチェックをしながら、いち早くその傾向に気がつくこと
- 使命の理解、成果を出すための取り組み、自分の成長について意識していること
- 自分自身以外にそのことを気にかけて取り組んでくれる人がいること
こういったことが必要でしょう。
サーバント・スタイルは、そのために有益な情報提供、取り組みの機会の提供、パートナーとしての関わりを提供します。お役に立ててください。
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